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結合商標の類否   くれないケアセンター事件

知財高判 2016(H28).12.22 H28(行ケ)10145 審決取消請求事件

事実の概要

1 本件は,原告が有する商標権について,被告が登録無効審判を請求したところ,特許庁が指定商品の一部について登録を無効にする(請求認容)審決(以下「本件審決」という。)をしたため,原告が審決の取消しを求める本件訴訟を提起したものである。

2 審決の理由は,本件商標と,「くれない」の文字を標準文字で表してなる登録第5287080号の商標(以下「引用商標」という。)は,類似の商標であって,本件商標の指定役務中「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」(以下「本件指定役務」という。)は,引用商標の指定役務と類似するものであるから,本件商標は,本件指定役務について商標法4条1項11号に該当し,同法46条1項に基づき,本件商標の商標登録は本件指定役務に限り無効にすべきであるというものである。

判 旨

 請求棄却、審決認容。裁判所は、本件商標が本件指定役務に限り商標法4条1項11号に違反して登録されたとの本件審決を認容した。

1 本件商標の「くれない」を類否判断の対象にすることの可否
(1) 商標法4条1項11号に係る商標の類否判断に当たり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである。(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228号561頁参照)

(2) これを本件についてみるに,本件商標の「ケアセンター」という構成部分は,少なくとも本件指定役務との関係においては介護の提供場所を一般的に表示するものにすぎず,当該構成部分から役務の出所識別標識としての称呼,観念は生じないというべきである。他方,「くれない」という構成部分は,そもそも「ケアセンター」という構成部分と用語として関連するものではなく,「くれない」という用語は,本件指定役務の内容等を具体的に表すものではないから,本件指定役務との関係では,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。そうすると,本件商標のうち「くれない」という構成部分を抽出し,当該構成部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。

本件商標
(本件商標)
商標権目録
(引用商標)

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2 本件商標の「くれない」と引用商標の「くれない」の類否判断
 本件商標の構成部分である「くれない」と引用商標の「くれない」は,その外,観念及び称呼がいずれも同一であり,介護に係るサービス等において使用されるという実情を踏まえても,上記にいう「くれない」と引用商標の「くれない」が本件指定役務に使用された場合に,役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかである。

3 原告の主張に対する判断
 原告は,本件商標は「くれないケアセンター」全体が出所識別機能を有するにもかかわらず,「くれない」という構成部分のみを抽出して引用商標と類否判断し,これを肯定した審決の判断には誤りがあるというものである。
 しかしながら,上記1において説示したとおり,結合商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などは,許されるべきである(前掲最二小判平成20年9月8日参照)。本件商標のうち「ケアセンター」は,本件指定役務との関係では「介護施設」という役務の提供場所をいうにとどまり,それ自体出所識別機能を有するものとは認められないのに対し,「くれない」は,「ケアセンター」という用語とは本来的に関連性がなく,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることは明らかである。そうすると,本件商標のうち「くれない」という構成部分を抽出して商標の類否判断をすることが許されると認めるのが相当である。
 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

4 まとめ
 以上によれば,本件商標は本件指定役務に限り引用商標に類似し商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたものであるとした審決の判断には誤りがないものと認められる。

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検 討

 判決に賛成

 本判決は、商標の類否についての常識的な判断である。特許庁の審査で,両商標が本件指定役務について類似であると判断した審査官がいることが信じがたい。

以 上

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