「LEC出る順シリーズ」著作権侵害事件|newpon特許商標事務所

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イラストの著作物の翻案が認められた事例 LEC出る順シリーズ事件

大阪地裁判 H11・7・8 H9(ワ)3805 著作権侵害差止等請求事件

事実の概要

 原告は,別紙原告イラスト目録記載1ないし3のイラスト(以下,それぞれを「原告イラスト1」などといい,これらを「原告各イラスト」と総称する。)につき,著作者として著作権を有する。被告有限会社本間デザイン事務所(以下「被告本間デザイン」という。)は,別紙被告イラスト目録記載1ないし11の各イラスト(以下,それぞれを「被告イラスト1」などといい,これらを「被告各イラスト」と総称する。)を製作し,被告株式会社東京リーガルマインド(以下「被告LEC」という。)は,被告各イラストのいずれかを別紙書籍目録番号欄記載1ないし153の書籍(以下,それぞれを「本件書籍1」などといい,これらを「本件各 書籍」と総称する。)の表紙及び表紙カバーに使用して,本件各書籍を発行している。

 原告は,被告各イラストが,原告各イラストの複製物ないし翻案物であるとして,著作権ないし著作者人格権に基づき,被告LECに対して本件各書籍の一部の出版等の差止めを求めるとともに,被告らに対し,損害賠償金1610万2000円及び遅延損害金の連帯支払並びに謝罪広告の掲載を求めた事案である。

原告著作物
(原告イラスト1)
被告イラスト
(被告イラスト1)

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判 旨

 裁判所は、判決は、被告イラストは原告イラストの翻案に当たるとして、著作権および同一性保持権の侵害を肯定し、被告らの過失を認めた上で、差止および損害賠償の請求を認容した。

 著作権侵害の成否

 (1) 原告イラスト1と被告イラスト1について

 ア 争点1(依拠性の有無)

 すなわち,原告イラスト1と被告イラスト1は,人形が木彫製であるか否か,上半身の傾き方や脚の開き方,右腕の格好,左手上の家の数等の点で相違が見られるものの,A型の体型にデフォルメされた人形が左手で肩の高さに家を持ち上げている全体的な構図のみならず,人形の手のひらの上の家が複数であり,手のひらのすぐ上に配置された家の屋根の稜線部分に支えられるように別の家が載っているという構図や,人形を肌色一色にした上,手のひらの上の家を三角屋根にし,窓を青色の格子状にし,鮮やかなパステルカラーで着色するなどの具体的な表現方法を含む多くの点で共通しており,このような一致は偶然によるものとは考え難い。

 イ 争点2(類否について)

 原告イラスト1と被告イラスト1の共通点のうち,立体の人形を左斜め上にライティングを施して撮影する表現方法,人形を,頭や手足を球状ないしひしゃげた球状にしてデフォルメする表現方法,人形に物を持たせる表現方法等は,美術の著作物としてありふれた表現方法であって,かかる点が共通していることのみをもって被告イラスト1が原告イラスト1に類似しているということはできない。しかしながら,人形を肌色一色で表現した上,人形の体型をA型にして手足を大きくすることで全体的なバランスを保ち,手のひらの上に載せた物が見る人の目をひくように強調するため,左手の手のひらを肩の高さまで持ち上げた上,手のひらの上に載せられた物を人形の半身程度の大きさに表現するという表現方法は,原告の思想又は感情の創作的表現というべきであり,原告イラスト1の特徴的な部分であるということができる。

  そして,被告イラスト1は,このような原告イラスト1の創作的な特徴部分を感得することができるものであるから,原告イラスト1に類似するものというべきである。したがって,被告イラストにおいて,人形の材質,上半身の傾き方,右腕の格好,脚の開き方,左手の上の家の数等の具体的表現において,独自の表現を加えている点を考慮してもなお,被告イラスト1は原告イラスト1の翻案物に該当すると認めるのが相当である。

 (2) 争点3(被告LECの故意過失の有無)

 ア 上記において認定したところによれば,被告本間デザインは,原告イラスト1に依拠して,その翻案物である被告各デザインを製作したものであるから,原告デサイン1の著作権及び著作者人格権の侵害につき故意又は過失のあることは明らかであるが,被告LECは,故意過失を争うので,この点につき検討する。

 イ 上記アにおける認定事実によれば,被告LECは,被告各イラスト製作当時,被告各イラストが原告各イラストの著作権ないし著作者人格権を侵害するものであることを具体的に認識していたとは認められない。

 しかしながら,被告LECは,書籍の編集,出版等を業としている株式会社であり,その編集,出版する書籍が他人の著作権や著作者人格権を侵害することのないよう注意を払う義務を負うものである。すなわち,書籍の編集,出版等に携わる者としては,自らが編集ないし出版等を行う著作物について,当該著作物が自らが著作した物であるか,あるいは既に著作権の保護期間の満了したことが明らかな歴史的著作物であるような場合を除き,第三者の著作権ないし著作者人格権を侵害する物に該当しないことを確認する義務を負うものというべきである。

 本件において,原告各イラストが,受験用参考書の表紙カバーや大学生協ないし企業のポスター等に使用されていたこと,被告LECは,コンペを実施して被告本間デザインの提案するイラストを採用するか否か決定する立場にあったものであり,被告本間デザインに対し,イラストの製作について参考にした資料の提出を求める等必要な調査を行い得る立場にあったことに照らせば,被告LECにおいて注意義務を尽くせば,被告イラスト1と原告各イラストとの類似性について認識し得たものというべきである。

 ところが,被告LECは,被告各イラスト製作について,被告本間デザインに対し,コンペ出品の条件としてレンタルポジは不可,著作権フリーのものは可,との条件を告げたに留まり,被告各イラストを書籍に使用するにあたって,第三者の著作権や著作者人格権を侵害することのないように注意を払ったことを窺わせる事実は一切認められない。

 この点,被告LECは,美術の著作権について素人なのであるから,専門家である被告本間デザインに製作を委託した以上,被告LECには特段の事情がない限り,自らその編著,出版する書籍に使用するイラストが他人の著作権や著作者人格権を侵害することのないよう注意を払う義務を負うものではないし,そのような注意を払うことは不可能である旨主張する。しかしながら,書籍の編著,出版には,言語の著作物だけでなく,美術の著作物をも使用するのが通常であり,書籍の編著,出版を業とする被告LECが,美術の著作物について著作権等を侵害することのないよう注意を払う義務を負わないということはできない。特に,本件においては,前記のとおり,被告LECは,コンペを実施して被告本間デザインの提案するイラストを採用するか否か決定する立場にあったものであり,実際,被告本間デザインに対し,デザインの要望を述べるなどしているのであって,被告本間デザインに対し,イラストの製作について参考にした資料の提出を求める等必要な調査を行い得る立場にあったというべきである。

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 同一性保持権侵害の有無

 前記1記載の認定事実を前提にすると,被告本間デザインによる被告各イラストの製作は,原告の意に反して原告イラスト1の改変をなす行為であり,同一性保持権の侵害に当たる。

 また,被告LECが,原告イラスト1に変更等の改変を加えた被告各イラストを使用して書籍を販売する行為も,また,同一性保持権を侵害する行為にあたる。

 そして,前記1記載のとおり,被告らにおいて,上記同一性保持権侵害について,少なくとも過失が認められる。

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 結論

 以上によれば,原告の本訴請求中,別紙書籍目録記載・・・の各書籍を,同目録の各書籍に対応するイラスト番号欄に記載する被告各イラストを使用して発行,販売又は頒布することの差止めを求める請求は理由がある。
 金銭請求については,・・・の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
 また,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を同目録記載の条件で同目録記載の新 聞に掲載することを求める請求も,理由がない。

検 討

 本判決の判断は首肯できる。

 著作物(イラスト)の類似性について、裁判所は、ありふれた表現と創作的表現を分けた上で後者が共通するからこそ類似するのだという論理付けをしている。また、ありふれた表現かどうかは被告が証拠として提出した過去の類似作品も加味して検討している。

以 上

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