「フラねこ」著作権侵害事件|newpon特許商標事務所

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黒猫のイラストの著作権侵害が争われた事例 フラねこ事件

大阪地裁判 H27.9.10 H26(ワ)5080号 著作権侵害差止等請求事件別紙

事実の概要

 原告Xは,猫のイラストレーターとして活動する者で,原告イラストの作者である。
 被告P2は,被告イラスト1の作者であり,インターネット上で発見した黒猫のイラストをダウンロードし,同イラストの頭部を切り取り,同頭部にフラダンスの衣装等を組み合わせて,被告イラスト1を作成した。
 被告P3は,福島県いわき市の地域の活性化を図るために,「いわきフラオンパク」という名称のイベントを企画・開催しているいわきフラオンパク実行委員会(以下「実行委員会」という。)の委員長であり,被告イラスト1を基に,被告イラスト2ないし17が 作成され,実行委員会において,それらのイラストを使用したいわきフラオンパクのガイドブック等を作成,配布した。

 本件は,Xが,①P2に対して,Xが作成した原告イラストを無断で改変して被告イラスト1を作成し,被告イラスト1をインターネット上にアップロードしてXの著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したと主張し,不法行為に基づく損害賠償請求として合計20万円の支払を求め,②P2及びP3に対して,被告イラスト1を基に別紙被告イラスト目録2ないし17記載のイラストを作成し,ガイドブック等として印刷して譲渡し,若しくはウェブページ上にアップロードするなどして,Xの著作権(被告らにつき複製権又は翻案権,P3につき譲渡権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したと主張し,連帯して,不法行為に基づく損害賠償請求として合計310万円の支払を求めた事案である。

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原告著作物
(原告イラスト)
被告イラスト
(被告イラスト)

判 旨

 損害賠償請求認容。Xのその余の請求棄却。
 裁判所は、原告の原告イラストに関する翻案権を侵害するとともに,氏名表示権及び同一性保持権を侵害する行為を認め,XのP2,P3に対する損害賠償請求は認めたが、販売等は中止していたのでその余の請求は棄却した。

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判旨1争点(1)(P3に被告適格があるか)について

 実行委員会が権利能力なき社団であるか否かを判断するまでもなく,P3には被告適格が認められる。

判旨2争点(2)(被告らの具体的行為),争点(3)(P2に著作権侵害及び著作者人格権侵害に関して故意又は過失が認められるか),争点(4)(P2の行為につき私的使用目的が認められるか)及び争点(5)(P3に著作権侵害及び著作者人格権侵害に関して故意又は過失が認められるか)について

(1) 被告イラスト1について

 被告イラスト1は,首より下の部分は原告イラストと異なるが,頭部の描画が原告イラストとほぼ同一であるから,原告イラストの本質的特徴を感得し得るものである。そして,このような類似性に加え,前記認定のようなP2が被告イラスト1を作成した経緯からすると,P2は,Xのホームページにアクセスし,原告イラストに依拠して被告イラスト1を作成したと推認される。したがって,被告イラスト1は,原告イラストを翻案したものであり,P2は,Xの翻案権,氏名表示権及び同一性保持権を侵害したということができる。

 また,P2が,被告イラスト1が写った写真をブログにアップロードした行為は,Xの公衆送信権を侵害したものであるということができる。なお,この写真における被告イラスト1の複製・利用は同イラストの宣伝を目的とするものであるから,P2のこの行為は,著作権法30条の2第2項により許容されるものではない。

 P2は,Xは,自らの著作権を厳格に管理していたわけではなく,特に著作権の表示をせずに,自由に使用することも認めていたのであるから,P2がウェブ検索の結果探した画像をコピーして使用したとしても,その行為には過失は認められないと主張している(争点(3))。

 しかしながら,著作物に著作権者の表示がなされていなくとも,当該著作物は著作権法上保護の対象となるのであり,現に,著作権表示のない著作物は多数存在している。そして,原告イラストは,美術の著作物として著作権の対象となることは明らかなものである。そうすると,仮にXのホームページにおいて,原告イラストについて©マークによる著作権表示がなかったとしても,著作権放棄である旨の表示がない限り,原告イラストは著作権放棄ではないと考えるのが自然であり,乙3の記載からすると,被告イラスト1の作成当時も,Xのホームページに著作権放棄の表示があったとは認められない。したがって,P2は,実行委員会に提供するための改変行為がXの著作権及び著作者人格権に牴触するものであることを,容易に認識し得たというべきである。

 以上より,被告イラスト1を作成し,それが写った写真をブログにアップした行為がXの著作権及び著作者人格権を侵害することについて,P2には過失があったと認められる。

 P2は,P2の上記行為につき私的使用目的を主張している(争点(4))。
 しかし,P2は,記者会見まで行った第2回いわきフラオンパクのイベントに供するために被告イラスト1を作成したのであるから,その行為が「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲において使用すること」(著作権法30条1項柱書き)を目的とするものであるとは認められない。また,被告イラスト1を,実行委員会のメンバーでなくとも誰でもアクセスできるブログにアップする行為についても,上記の私的使用を目的とするものであるとは認められない。

(2) 被告イラスト2について

 P3は,P2が作成した被告イラスト1に基づいて作成された被告イラスト2を第3回いわきフラオンパクのガイドブックに掲載する際、その著作権の所在、著作権違反がないか否かについて、厳格に確認する注意義務はなかったと主張している(争点(5))。

 本件についてみると,前記アのとおり,P3は,第3回いわきフラオンパクの準備段階において,P2と会議において同席しており,被告イラスト1をキャラクターとして利用するに際し,P2に対して被告イラスト1の作成経緯を確認し,他人のイラストに依拠していないかどうかを確認することは容易であったといえる。しかしながら,P3は,P2に対する確認を怠っており,過失があったと認められる。

(3) 被告イラスト3について

 被告イラスト3が原告イラストに類似することは当事者間に争いがなく,被告イラスト3は被告イラスト1に依拠して作成されたと認められるから,被告イラスト3は,原告イラストを翻案したものであると認められる。そして,前記認定事実によれば,被告らは,被告イラスト3を第4回いわきフラオンパクのガイドブックに使用することにつき積極的に関与したと認められ,被告らに過失が認められることは先に述べたのと同様であるから,この行為は,Xの原告イラストに関する翻案権を侵害するとともに,氏名表示権及び同一性保持権を侵害する行為であり,被告らには共同不法行為が成立すると認められる。

(4) 被告イラスト4について

 被告イラスト4は,被告イラスト3と同様に,原告イラストを翻案したものであると認められる。そして,前記認定事実からすると,P3は実行委員会の代表者として被告イラスト4を第5回いわきフラオンパクのガイドブックに使用することにつき積極的に関与したと推認され,P2もミーティングに参加していたことから,そのことを認識していたと推認される。そして,被告らに過失が認められることは先に述べたのと同様であるから,被告イラスト4を第5回いわきフラオンパクのガイドブックに使用する行為は,Xの原告イラストに関する翻案権を侵害するとともに,氏名表示権及び同一性保持権を侵害する行為であり,被告らには共同不法行為が成立すると認められる。

結論 

 以上によれば,Xの請求は,P2に対し,90万円及びこれに対する平成26年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を,P3に対し,90万円及びこれに対する同月9日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で,それぞれ理由があるから認容することとし,その余は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。

検 討

(1) 実行委員会の委員長の被告適格性

 裁判所は、「実行委員会が権利能力なき社団に該当するか否かにかかわらず,P3は,自身が,被告イラストを作成し,いわきフラオンパクのガイドブック等を製作しており,このように自ら著作権侵害行為を行っていることから,P3に対する不法行為責任は当然に発生するからである(権利能力なき社団の構成員が不法行為を行った場合には,構成員も当然に不法行為責任を負う。権利能力なき社団と共同不法行為を構成するだけである。)。したがって,被告P3は被告適格を有する。」と認定した。
 委員長は、自らの名でガイドブック等を発行するときには留意すべきである。

(2) 著作物(イラスト)の類似性

 被告らが争っていないので争点になっていないが、裁判所は次の判断をしている。
 「被告イラスト1は,首より下の部分は原告イラストと異なるが,頭部の描画が原告イラストとほぼ同一であるから,原告イラストの本質的特徴を感得し得るものである。そして,このような類似性に加え,前記認定のようなP2が被告イラスト1を作成した経緯からすると,P2は,原告のホームページにアクセスし,原告イラストに依拠して被告イラスト1を作成したと推認される。したがって,被告イラスト1は,原告イラストを翻案したものであり,P2は,Xの翻案権,氏名表示権及び同一性保持権を侵害したということができる。」

以 上

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