特許庁ではどのように商標を審査しているのか?|newpon特許商標事務所

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商標の審査

 商標登録出願をすると、特許庁の審査官によって、原則出願順に、登録要件の審査が行われます。この結果についての、最初の通知は出願後数か月経過後にきます。この通知には登録査定と拒絶理由通知があります。拒絶理由通知に対しては、一定期間内に意見書及び/又は補正書を提出して対抗します。

1 はじめに

 出願された商標は、特許庁で審査官によって審査され、所定の要件を満たす場合に登録査定となります。審査には、商標登録出願について形式的要件を審査する方式審査と実質的要件について審査する実体審査があります。実体審査において、審査官は、拒絶理由がある場合、拒絶査定しなければなりませんが、その前に、出願人に対して、拒絶理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません(15条の2)。

2 拒絶理由通知への対応

 出願人は、拒絶理由通知に対しては、当該通知の受領日(通常は、発送日)から40日(外国人の場合、3か月)以内に、意見書を提出することができます。また、必要であれば、手続補正書を提出します。その結果、拒絶理由が解消したならば、登録査定(16条)をしなければなりませんが、拒絶理由が解消していなければ拒絶査定となります。

(1) 意見書の提出

 審査官が通知した意見書に対する反論を記載します。例えば、4条1項11号に該当する旨の拒絶理由に対しては、出願商標と引用商標が類似しないことを反論します。

(2) 補正

 補正とは、商標登録出願に係る願書に記載した指定商品・役務又は商標登録を受けようとする商標の内容を補充、訂正することです(68条の2)。補正できる範囲は、出願の要旨を変更しない範囲です(16条の2、 9条の4)。願書に記載した商標登録を受けようとする商標又は指定商品・役務の内容を実質的に変更又は拡大することは、補正の遡及効のために、第三者に不測の不利益を与えるとともに、審査遅延になるからです。

① 商標の補正

 商標の補正はほとんどの場合、要旨変更となり認められません。

a. 要旨変更となる場合
i) 商標の付記的部分でない普通名称、図形等を変更し、追加し、又は削除することであっても、自他商品・役務の識別力に影響を及ぼし、先願主義(8条)に反するため、認められません。例えば、商標「桜羊かん」のうち「羊かん」の文字を削除し、商標「桜」について「羊かん」の文字を追加する場合です。
ii) 出願後に立体商標である旨の願書への記載(5条2項)を追加又は削除すること。
iii) 出願後に標準文字である旨の願書への記載(5条3項)を追加又は削除すること。
vi) 色彩の変更又は追加についても、色彩も商標の構成要素(2条1項)ですから認められません。
b. 要旨変更とならない場合
 付記的部分に「JIS」、「特許」等の文字等や販売地、役務の提供場所等を表わす文字がある場合、これらを削除する補正は認められることがあります。

② 指定商品・役務の補正

a 要旨変更となる場合
i) 指定商品・役務の範囲を、非類似商品・役務に変更、拡大する場合のみならず、類似商品・役務に変更、拡大する場合。例えば、第1類「塩酸」を第1類「植物育成剤(非類似商品)」に、第1類「塩酸」を第1類「硫酸(非類似商品)」に変更する補正は、要旨変更に該当し、認められません。
ii) 一度補正して指定商品・役務を減縮した後にこれを元に戻す補正。商標法には特許法のような出願当初の範囲で補正を認める旨の規定がないため、認められません。
b 要旨変更とならない場合
 指定商品・役務の減縮、適正な商品区分等への補正すること。先願主義(8条)に反せず、第三者に不測の不利益を与えることもないため、要旨変更となりません。例えば、第1類「化学品」を第1類「塩酸」に減縮したり、第1類「化粧石鹸」を第3類「化粧石鹸」に是正する補正は、認められます。

(3) 出願の分割・変更

 拒絶理由のある指定商品・役務について分割に係る新たな出願をすることにより、拒絶理由のない指定商品・役務については早期権利化を図るとともに、拒絶理由のある指定商品・役務については、出願日の遡及効を得つつ(10条2項)、ゆっくり権利化を図ることができます。
 また、例えば、通常の商標登録出願をしたが、3条1項3号の拒絶理由通知を受けた場合に、通常の商標登録出願を地域団体商標の商標登録出願に変更することにより、地域団体商標の登録を受けることがあります。

3 早期審査の制度

 商標登録出願は、出願された順番に審査され、審査官による最初の審査結果通知がくるのは出願日から4~6か月後が通常です。しかしながら、早期の審査結果を得たい場合には、所定の要件を満たした「早期審査に関する事情説明書」を提出することによって、出願日から1ないし2か月という短い期間で審査結果が得られます。
 早期審査の対象となる出願は、次の(1)、(2)のいずれかに該当するものです

  • (1) 出願人が、出願商標を指定商品・役務に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願
     ここで、「権利化について緊急性を要する出願」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
    • a) 第三者が許諾なく、出願商標と同一・類似商標を出願人の使用・準備に係る指定商品・役務と同一・類似する商品・役務について使用している又は使用の準備を相当程度進めていることが明らかな場合
    • b) 出願商標の使用について、第三者から警告を受けている場合
    • c) 出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合
    • d) 出願商標について、出願人が外国出願している場合
  • (2) 出願人が、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願
     なお、指定商品・役務中に、出願商標の使用又はその準備を進めていない商品・役務を含む場合には、早期審査の申出時に、それを削除する補正が必要です。

 拒絶理由通知に対しての対応や、審査方法に関する疑問・質問がある場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。

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